いつのころからか、和歌山市の雑賀崎では春と秋の彼岸の中日の夕陽は、ハナが降るように見えると言い伝えられてきました。
住民で構成する『雑賀崎の自然を守る会』では「夕陽を見る会」を主催する一方、調査も活力的に行ってきました。その調査結果を「雑賀崎のハナフリ」という冊子にまとめています。
雑賀崎の北から西に広がる海は、
紀の国の雑賀の浦に出で見れば 海人の燈火 波の間ゆ見ゆと万葉集に詠われた所で、夕陽もまた格別に美しいところです。
今、私たちのふるさとの海には大規模な埋立計画が持ち上がっていますが、この問題を契機にして、私たちは、現在まで守られてきた海を一層大切なものに思い、次代にも伝え残したいと考えるようになっています。
私たちは日々海を見、夕焼けを眺めて暮らしていますが、とくに春秋のお彼岸の中日には、日が西に傾き海に沈む頃、夕陽から“ハナが降る”といい、それを見る風習があります。夕方、「ハナ降んの見に行こか」といって、誘い合わせて近所の小高い所から見るのですが、それを見たことのある人は皆とても美しいものだといいます。
“ハナが降る”というのは大変に不思議な現象のように思われますが、これを見るという風習は、私たち雑賀崎の住民が、遠い昔から海とその景観とに深く関わって暮らしてきたことを示すものではないかと考えています。
そこで、私たちは1999年12月下旬から、彼岸に“ハナが降る”のを見るという風習について調査を行ってきました。
中 略
私たちは、いつまでもこの雑賀崎で“ハナが降る”のを楽しみたいと願っています。
2001年4月
|