蓄積と信頼

 日本の役人はおおよそ3年で担当部署を替わる。聞けば一応いろんな部署のことを知っておきたいとか、長くいると癒着が生じやすいとかの理由があるらしい。もっともなことである。
 しかし、サービス業に直結する観光関係の仕事は税務や公共事業と違って、裾野の広い総合産業だ。絵はがきやポスターをつくり、観光宣伝隊を結成してチラシを配ったり、エージェント巡りをしている時代は過ぎた。足元を洗い直し、オンリーワンを磨きだし、最も有効な手段で広く知ってもらうには、人とのつながりが生命である。それなりの蓄積と信頼が不可欠だ。
 やっと分かってきた3年目に転勤では、いい仕事はできない。海外では助役、副知事クラスの人が観光担当だ。集客都市の観光施策は、絵に描いた餅では長続きしない。観光にカンフル注射はないのである。

     (嶽)   (2001年 大阪新聞より)

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