動く電車博物館

 広島ではかつて「邪魔者」扱いされた路面電車が立派に走っていて、お前さん元気だったか! となつかしい。学生時代を過ごした京都や仕事で利用した大阪の市電も健在だ。昭和40年代のモータリゼーションの影響で、廃線の危機に直面した。
 が、「広電」ではその原因を徹底究明し、路線内通行禁止など諸策を講じた結果、現在は「乗降しやすい、排ガスがない、風景が見える、高齢者に優しい、確実で安い」と市民の支持を受け、1日平均利用約18万人、年間9億円の黒字の「動く電車博物館」だ。全国に19社ある路面電車中の優等生だ。各地の廃車を経費節減のため改装せず活用したのもよかった。原爆投下の3日目、わずかに残った電車を徹夜で修理して一区間だけ走らせ「おお広電が走ってる」と呆然自失の市民を感激させた。その誇り、愛情の深さが宝である。

     (嶽)   (1998年 大阪新聞より)

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