大浴場のスリッパ

 旅館の大浴場にいくと、帰りにスリッパがずらりと並んでいて、どれが自分のだったかわからない。空いている時間帯なら、隅にぬぐとか、なんとか工夫できるが、夕・朝食前など大変である。
 いや、なにも自分だけが清潔な足だというわけではないが、気持が悪いのを我慢して、そこらにあるのを履いて帰るわけだ。それほど神経質なら、靴下を履けばいいだろうという説もある。ごもっともだが、風呂上がりに靴下をはいたり靴を履くというのはもうひとつ。
 そこで最近は、簡単なソックスを置く旅館も増えた。どうせ2度は使わないので、持ち帰ってもいいのだそうだ。うちでも使えないことはないし、鞄に忍ばせておいてよそで使ってもいい。スリッパは使わず、エレベーターの中までござを敷いている旅館もある。それが新しいうちはいいのだが…。

     (嶽)   (1999年 大阪新聞より)

もどる