島根県立美術館

 かつて芥川龍之介が「水に浮かぶ睡蓮のような」といい、ラフカディオ・ハーンらがその落日の美しさを絶賛した、松江の宍道湖畔に先ごろオープンした島根県立美術館に行った。
 閉館時刻を落日から30分後にするという粋な計らいからもわかるように、水辺の美の殿堂という環境を活かし、展示品も一点豪華主義を排し、水をテーマにした作品を底流にしている。絵画、版画、工芸、彫刻、写真の5展示室を持つ、山陰地方初の総合美術館だ。
 野外彫刻や明治時代の面影を伝える大灯ろうをしつらえるなどして湖畔散策の新たな空間美も創出した。安来の足立美術館が大観を主軸とする日本画を特色とする以外に、凝った日本庭園を持つことで広範な支持層を得たように、この美術館からみる夕映えの湖面の美しさや散策が、かなりの魅力となるだろう。

     (嶽)   (1999年 大阪新聞より)

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