日刊ウベニチ

2000.6.23付

「夕日は観光資源。21世紀の地域振興、名所づくりの目玉にしよう」と、このほど全国26道府県の48地域が「日本の夕陽(ゆうひ)百選」に選ばれた。これは、大阪市内に事務局を置く「日本の夕陽百選選考委員会」(委員長・藤嶽彰英旅行ペンクラブ代表幹事)が進めている企画だ。選ばれた地域では既に、多彩な事業を独自に展開している所が多いが、今後は協力し合って「日本列島夕陽の旅」キャンペーンを展開していくという。

■「日本人の心を取り戻したい」

 この「夕陽百選」を考案したのは、近畿、四国圏の自治体のアドバイザーとして活躍している二木賢治氏(60)。二木氏は、行政の地域振興策を観光面から支援する企画会社サンプロジェを経営する。
きっかけは3年前、神戸で起きた少年による連続児童殺傷事件。「なぜ子どもたちの心が、こんなにすさんだのか」と考え続けていた二木氏の胸を打ったのが、宗教学者で私立京都造形芸術大学院長の山折哲雄氏が唱える”夕日信仰説”だ。
 山折氏によれば、「日本人は古来、夕日を見て感動したり、敬謙な気持ちになったりした」という。ただ、現在は「東京に住む子どもたちの43%が、夕日を見たことがないという調査結果がある。子どものころに、そういう感動を受けていないことが、日本人の心に影響している」と分析する。
 この説をヒントに考えたのが「夕陽百選」、夕日を活用して地域の振興を図ると同時に、「日本人の心」を取り戻す手助けもしたいとの願いを込め、企画を始めた。

■住民一体の取り組みを最優先

 しかし、当初は全国のどこに夕日の名所があるのか分からず、取りあえず始めたのが情報収集。各自治体の大阪事務所に調査を依頼したり、都道府県庁の観光関係部署に文書で照会したりするなどして、名所のリストアップと資料収集を進めた。次に、「他薦書」を作成して、リストアップされた市町村の担当責任者に送付。市町村からは「自薦書」を提出してもらった。
 二木氏が事務局長を勤める「日本の夕陽百選選考委員会」は昨年9月に発足。日本観光協会関西支部や大阪府観光連盟などからもメンバーを出してもらい、自薦、他薦書などを参考にしながら、候補地110地域のなかから選考作業を進めた。
 応募してきたのは「いずれ劣らぬ自称『夕陽日本一』ばかり」(二木氏)だが、選考の過程では「住民ぐるみで、意欲を持って取り組んでいる地域を最優先した」(同)という。

■東奔西走の”夕焼け課長”

 選ばれた48地域のなかで、得に取り組みが熱心なのは愛媛県双海町。年間50万人近くの観光客が夕日を見るために訪れるという同町は、「夕焼け音楽祭」「夕焼けカップパラグライダー大会」「夕焼け放送局」など、多彩なイベントを繰り広げる。
 同町地域振興課の若松進一課長は、自他ともに認める”夕焼け課長”。イベント紹介の講演などで全国を歩き回り、一ヶ月に600枚もの名刺を配るという。
 ユニークなのは福岡県志摩町。三重県二見町と同じ名の「夫婦(めおと)岩」があることから、「朝日の町」を自称する二見町と姉妹都市を組んで30年になる。両町の町民が二見町の夫婦岩の朝日を見た後、新幹線でその日のうちに志摩町へ移動、夫婦岩の夕日を見るという鑑賞会を続けている。
 このほか、「夕陽海岸マラソン」を開催して、今年で7回目を迎える青森県深浦町、展望台「夕日と風が見えるん台」を整備した静岡県御前崎町、日本海に沈む夕日を見晴らす展望ぶろ「三国温泉ユアポート」が自慢の福井県三国町なども選ばれた。
「日本の夕陽百選選考委員会」の事務局の電話番号は06-6355-6691。

 

 

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